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5年生の国語に登場する2つの説明文、「見立てる」「言葉の意味が分かること」は、いずれも文化や言葉に表れた「ものの見方」について書かれた文章です。「見立てる」は、「言葉の意味が分かること」の導入教材として扱われます。文量も短く、説明文の読み方を学ぶ導入として活用できます。どちらも、筆者の考えをとらえ、自分の考えをまとめて伝える力を育む教材です。
授業では、下のプリントを使いました。
変更を加えたい場合には、こちらからダウンロードすればWord文書なので、変更が可能です。ご活用ください。
見立てる・言葉の意味がわかること学習プリント(Word形式)
それでは、授業の流れについて紹介します。以下の4段階の流れで指導をしました。
授業の4つの柱(共通の学習過程)
- とらえる:段落ごとの役割や全体構成をつかみ、文章の要旨と筆者の考えをまとめる
- ふかめる:具体的な事例を読み取り、筆者の意図を深く理解する
- まとめる:筆者の考えと自分の考えを比較し、自分なりの見解を言語化する
- ひろげる:考えを交流し、多様な視点に触れることで見方を広げる
【教材1】「見立てる」:短い説明文で構成を読む練習を
①とらえる:段落ごとの役割や全体の構成から文章の要旨をまとめ、筆者の考えをとらえる
(1)全体の構成を考える
要旨をまとめるために、まずは文章全体の構成を考えます。
文章を「初め」「中」「終わり」に分けますが、「見立てる」は既に本文上部に分けられています。
・「初め」「終わり」:筆者の考えが述べられている段落
・「中」:考えについてくわしく説明している段落
という見分け方について、確認をします。
(2)「中」を、内容のまとまりでさらに分ける
文章全体の構成を考えた後は、その中身を少し具体的に考えていきます。
「中」を内容のまとまりでさらに分けるために、段落ごとに要約をします。
第2段落:あやとりは作った形とその名前で実在するものが結び付けられている
第3段落:自然や生活の仕方によって同じ形でもつけられる名前が違う
第4段落:日本の例
第5段落:世界の例
第4・5段落は、第2・3段落に書かれていることに対する説明となっています。
(3)文章の要旨を150字以内でまとめる
要旨をまとめる際には、
・文章の話題と全体の構成を把握し、筆者の考えをとらえる
・字数におうじて、筆者の考えをまとめる
・繰り返し使われている言葉を見つけ、その言葉を用いる
というポイントを意識すると書きやすいことを確認します。
まとめることが苦手な児童には、本文に線を引き、そのまま書き写すように伝えます。
(例)わたしたちは、知らないうちにあるものを別のものとして見る「見立てる」という行為をしている。見立てるという行為は、想像力にささえられており、世界各地で行われているあやとりでは同じ形に対いてつけられる名前が、地域によってちがうことがある。想像力は、わたしたちを育んでくれた自然や生活と深く関わっている。(149文字)
②ふかめる:書かれている事例から、内容の理解を深める
筆者が取り上げている事例と筆者の伝えたいことの関係を確認します。
(1)筆者が取り上げている2つの事例
・写真Aの形は、「あみ」「田んぼ」「ざる」「たたみ」「かきね」「しょうじ」「油あげ」など、それぞれの土地の生活と、よりかかわりの深いものに見立てられて名前がついています。(プリント)
「あなたなら、写真Aの形にどのような名前をつけますか。」と、児童の発想を聞き、教科書の例示以外の名前が出たらおもしろいですね。
「サッカーを習っているのでサッカーゴールに見える。」「お腹が空いたから、四角いピザに見える。」など。
・日本だけでなく、世界を見ても同様に土地の生活と命名には深い関りがあることを確認します。写真Bの形は「かもめ」「ログハウス」などの名前がつけられています。同様に、「あなたなら、写真Bの形にどのような名前をつけますか。」と、児童の発想を聞きます。
(2)事例と筆者の伝えたいこととの関係
筆者は本文の中で、「「見立てる」とは、あるものを別のものとして見るということである。」と述べています。「あるもの」と「別のもの」が「中」で何を示しているのかを確認します。
→あやとりを例にすると「「見立てる」とは、あるもの(ひもが作り出した形)を別のもの(その名前でよばれている実在するもの)として見るということ」
そして、関係のない2つを結び付けるとき、必ず1対1対応が一致するのではなく、自然や生活によって変わってくるということを確認します。
③まとめる:文章を読んで自分の考えをまとめる
・あやとり以外の「見立て」をしているもの
・同じものなのに、他の人と別の捉え方をしていた経験
・身近にある自然や生活と「見立て」が関係していること
など、書く視点を与えます。
書くことが得意な児童には、本文を引用して書くように伝えます。
④ひろげる:自分の考えをグループで伝え合い、知見をひろげる
書いた内容についてグループ内で発表し合います。朝の会の日直のスピーチとして扱ってもいいです。
【教材2】「言葉の意味が分かること」:本格的な説明文の読解へ
「見立てる」で学んだ説明文の読み方を活かし、「言葉の意味が分かること」の読解に進みます。
①とらえる:段落ごとの役割や全体の構成から文章の要旨をまとめ、筆者の考えをとらえる
(1)全体の構成を考える
要旨をまとめるために、まずは文章全体の構成を考えます。
文章を「初め」「中」「終わり」に分けます。「見立てる」の学習の際に、
・「初め」「終わり」:筆者の考えが述べられている段落
・「中」:考えについてくわしく説明している段落
という見分け方をしたことを確認をします。
全体の構成を考えるために、各段落の要点をまとめることから始めます。
要約ではなく、一番大事だと思われる文章に線を引くのでもよいと思います。
(要点)
第1段落:言葉の意味には広がりがある
第2段落:問題提起
第3段落:「コップ」の意味を教えるとき、使い方も理解してもらわなければならない
第4段落:「コップ」の意味には広がりがあり、他の似たものを指す言葉との関係で決まってくる
第5段落:子どもは1つの言葉の意味の範囲を限られた例をもとに使うので、よくまちがえる
第6段落:子どもの言いまちがい
第7段落:自分が覚えた言葉を別の場面で使おうとしてうまくいかなかった例
第8段落:母語でない言語を学ぶときに起こる間違いの例
第9段落:母語でない言語を学ぶときに起こる間違いの原因
第10段落:1つの言葉をどのはんいまで広げて使うかは、言語によってことなる
第11段落:言葉の意味を「面」として理解することが大切
第12段落:言葉を学ぶ際に「言葉の意味は面である」ということについて、考えてみてほしい
(2)「中」を、内容のまとまりでさらに分ける
文章全体の構成を考えた後は、その中身を少し具体的に考えていきます。
段落ごとの要約をもとに、「中」を内容のまとまりでさらに分けます。
第2~6段落:小さな子どもが言葉を学ぶときに起こる間違い
第7~9段落:母語でない言語を学ぶときに起こる間違い
(3)文章の要旨を150字以内でまとめる
要旨をまとめる際には、「見立てる」の学習を想起し、
・文章の話題と全体の構成を把握し、筆者の考えをとらえる
・字数におうじて、筆者の考えをまとめる
・繰り返し使われている言葉を見つけ、その言葉を用いる
というポイントを意識すると書きやすいことを確認します。
まとめることが苦手な児童には、本文に線を引き、そのまま書き写すように伝えます。
(例)1つの言葉が指すものの中にも、さまざまな特徴をもったものがふくまれ、他の似たものを指す言葉との関係で決まってくる。わたしたちが新しく言葉を覚えるときには、物や様子、動作と、言葉とを、一対一で結び付けてしまいがちだが、言葉の意味には広がりがあるので、適切に使うためには、その範囲を理解する必要がある。(149文字)
②ふかめる:書かれている事例から、内容の理解を深める
筆者が取り上げている事例と筆者の伝えたいことの関係を確認します。
(1)筆者が取り上げている2つの事例
・「歯でくちびるをふんじゃった」
原因:自分が覚えた言葉を、別の場面で使おうとしてうまくいかなかった
結果:言葉の意味のはんいを広げすぎた
・「朝食にスープを食べました。」
原因:母語と同じ感覚で言葉を使った
結果:言葉の意味のはんいがちがった
(2)事例と筆者の伝えたいこととの関係
「原因と結果」の関係についてとらえます。
事例の結果だけでなく、その原因を説明することによって、事例と筆者の考えとの結びつきをわかりやすくしています。
身の回りの出来事を「原因と結果」の関係に着目して、表しましょう。
(児童の発表例)
「お肉を食べすぎたので、おなかをこわしました。」
「昨日は徹夜でゲームをしていた。だから、今とてもねむい。」
「かぜをひいた。それは、雨の中、サッカーをしたからだ」
それぞれの発表について、どこが原因で、どこが結果なのかを確認します。
③まとめる:文章を読んで自分の考えをまとめる
・言葉の意味を「点」でとらえて間違えた経験
・言葉の意味を「面」でとらえた経験
・これから意識したいこと
など、書く視点を与えます。
書くことが得意な児童には、本文を引用して書くように伝えます。
④ひろげる:自分の考えをグループで伝え合い、知見をひろげる
書いた内容についてグループ内で発表し合います。朝の会の日直のスピーチとして扱ってもいいです。
おわりに:2つの教材で「言葉」と「世界の見方」に気づく
「見立てる」では、想像力と文化が結びつくことを、「言葉の意味が分かること」では、言葉の意味の広がりを学びます。どちらも、言葉を単なる記号としてではなく、人と人とをつなぐ「意味の世界」としてとらえる大切な機会となります。
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