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■ 生き物の命を考える道徳授業
「生き物の命を大切にしましょう」という価値観は、子どもたちにとってすでに知っている「当たり前」のことかもしれません。しかし、その「当たり前」は本当に実践できているのでしょうか?
たとえば、雑草を引き抜いたり、蚊やハエを叩いたりしたことが、誰にでもあるはずです。それは本当に「命を大切にする」行動でしょうか?
本授業では、ファーブルの昆虫への愛情を通して、「生き物の命に大小はあるのか?」という問いを子どもたちに投げかけ、日常生活を見つめ直す道徳的価値の育成を目指します。
■ 題材:「虫が だいすき ―アンリ・ファーブル―」
- 分類: D 領域(自然愛護)
- ねらい:
アンリ・ファーブルの昆虫への深い愛情と姿勢にふれることで、身近な自然の中にあるおもしろさ・すばらしさを感じ取り、生き物を大切に思う心情を育てる。
■ 授業の展開
① 教科書を読む
児童とともに、教材文を音読または黙読し、ファーブルの行動や考え方を把握する。
② 登場人物の気持ちを考える
【発問例】
- あなたの好きな生き物は何ですか?
その生き物のどんなところが好きですか? - ファーブルは、なぜ虫を長い間見続けていたのでしょうか?
どんな気持ちだったのでしょう。 - ファーブルが「どこへでも好きなところへお帰り」と言って虫を逃がしたのは、なぜだと思いますか?
虫に対して、どんな思いがあったのでしょう? - あなたは、生き物を観察したり、生き物の話を聞いたりしたとき、どんなことを思ったり、感じたりしましたか?
③ 気づきを深める《価値への揺さぶり》
児童の価値観を揺さぶり、考えを広げるパートです。
教師からの語りで、道徳的葛藤を生み出しましょう。
《教師の語りかけ》
「生き物にも命があります。生き物の命を大切にしましょう。」これは、皆さんの多くが当たり前のことだと思っているかもしれませんね。
でも、ちょっと考えてみましょう。本当に、すべての命を大切にできているでしょうか?
■ ケース①:草むしり
校庭や自宅の庭で草むしりをしたことがある人も多いと思います。
でも、その雑草にも命があります。
「邪魔だから」「見た目が悪いから」と引き抜いてしまう…それは命を粗末にしていることにならないでしょうか?
■ ケース②:蚊やハエ
夏になると、蚊やハエが気になる季節です。刺されたり、うるさかったりすると、つい手で叩いてしまいますよね。
でも、蚊やハエも小さな命です。
私たちは「小さい」「迷惑だから」という理由で、命の重さを決めてしまっていないでしょうか?
④ 考えを深める《まとめ・内省》
ここで、児童が自分自身の行動や考え方を振り返る時間をつくります。
無理に結論を出させるのではなく、「揺らぎ」を大切に。
【問いかけ例】
- 「自分の都合で、生き物の命を粗末にしていることがあるかもしれない…」と気づいた人はいますか?
- それでも、人間が生活していくうえで、ある程度は仕方がないこともあるのでしょうか?
- 「申し訳ないな」と思うだけでも、行動や考え方が少し変わるかもしれませんね。
■ 授業のポイント(指導者向けメモ)
- 子どもたちに「命を大切にしましょう」と直接言うのではなく、「自分で気づく」「問いに向き合う」ことを重視。
- 「人間中心」の視点から脱却し、「命の対等性」について思考させる。
- 結論を急がせず、「矛盾に向き合う経験」を価値あるものとして捉える。
- 観察・探究・共感など、理科や総合学習とも関連づけ可能。
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