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道徳の授業は、「~しましょう」「~はよくない」といった一般論を並べる場ではありません。登場人物の行動について「どうすればよかったか」だけでなく、「なぜそうできなかったのか」「どんな気持ちだったのか」と、子どもたちがその人物の心情に寄り添い、想像を働かせることが大切です。
「こうするのが正しい」と言い切ることは、学級活動の学習に近く、また登場人物の心情を読み取るだけでは、国語の学習と重なります。道徳の授業では、「模範的な行動をとれたときの気持ちのスッキリ感」を子どもたちに味わわせつつも、さらに一歩踏み込んで、「わかっていてもできない」「ダメだと知っていてもやってしまう」といった、心の葛藤を題材にすることが重要です。
今回紹介する授業展開例が、皆さんの道徳の授業づくりのヒントになれば幸いです。
題材「がまんできなくて」
教科書:日本文教出版
指導内容:A・節度、節制
ねらい:
「少しぐらい」という気持ちから自制できないことで、自分を情けなく思う体験を通し、わがままを抑えて行動しようとする心情を育てる。
授業の展開
① 教科書を読む
登場人物の行動の流れを確認しながら、心情の変化に注目します。
② 登場人物の気持ちを考える
- (1)りおさんが、動画を見過ぎるのを我慢できなかったのはなぜでしょう?
- (2)雨にぬれた友達や、寒そうにしている1年生を見て、りおさんはどんな気持ちになったのでしょう?
- (3)動画を見過ぎないように努力し、毎朝きちんと起きられるようになったとき、りおさんはどんな気持ちになるでしょう?
- (4)あなたは、「やりたいこと」を我慢して「やらなければいけないこと」を選んだ経験はありますか?そのとき、どんな気持ちでしたか?
③ 心を揺さぶる問いかけ
ここでは、我慢が一方的に「良いこと」とは限らないという視点を提示し、子どもたちの考えを深めます。
「我慢をすることはたしかに大切です。でも、自分の気持ちを押し殺し、他の人ばかりを優先するのが、本当に正しいのでしょうか?」
- (1)係活動で本当はレク係をやりたかったけど、毎回我慢して友達に譲ってきた。結局、2学期も3学期も一度も希望の係になれなかった。これっていいこと?どう考える?
- (2)友達に嫌なことを言われたりされたりしても、「仲良くしなきゃ」と我慢している。これは本当にいいこと?
- (3)※自由に設定:子どもたち自身の経験や、似たような場面の再現事例を共有させても良い。
④ 学びのまとめ(結論)
- 「我慢」は時に必要だけれど、それがすべて正しいわけではない。
- 自分の気持ちを言葉にして伝えることも、大切な行動である。
- みんなが「少しずつ我慢する」ことで社会は成り立つが、「ずっと我慢し続ける」のではなく、「自分の思いを伝える勇気」も必要。
おわりに
道徳の授業では、子どもたちが「自分ならどうするか」「本当はどうしたかったのか」と、自分自身に問いかける時間を大切にしたいものです。この題材は、単なる「我慢の大切さ」だけでなく、「我慢と自分らしさのバランス」について考える良い機会になります。心の中の揺れや葛藤こそが、子どもたちの成長の糧になると信じています。
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