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小学校6年間の算数の学習は、中学校以降の数学の出来不出来に直結することは言うまでもありません。しかしながら、「小学生の算数だから簡単だろう」と侮ってはいけません。実際、早い子では小学2年生の学習でつまずき、4年生の内容が大きな壁として立ちはだかります。
では、どうすればそのつまずきを減らし、子どもたちが算数を「わかる」「できる」と感じられるようになるのでしょうか。
そのカギとなるのが 『まとまり』 の考え方なのです。
■「まとまり」とは何か?
「まとまり」とは、数や量を1つのかたまり(単位)として捉える視点です。
簡単に言えば、「ある数を1と見て、他の数がいくつ分あるのか」と捉える考え方です。
この「まとまり」の視点は、実は小学校6年間の算数に通して登場し、学年が上がるごとに深く、抽象的に展開されていきます。
■1年生:5と10のまとまりが数の基本
算数の最初の段階で学ぶのが、「5のまとまり」「10のまとまり」です。
・「7は5と2」
・「9は5と4」
このように、数を「5といくつ」に分ける練習を通じて、子どもたちは“かたまり”で数を捉える力を養っていきます。
教科書のブロックの図も、あえて「5といくつ」で分けて表示してあります。授業中に児童にブロックを出させるときには「先生が、一目見て数がわかるように置いてね。」と声を掛けます。
特に重要なのが「10のまとまり」です。繰り上がりのたし算や、繰り下がりのひき算は、「10を基準にして数を構成する力」がなければできません。
繰り上がりのたし算や繰り下がりのひき算の学習の前に、「13は10と3」、「6はあと4で10になる」など、10を基準とした数の分解・合成を徹底的に学び、定着させておく必要があります。
■2年生:かけ算=同じ数のまとまりがいくつあるか?
2年生の目玉単元はなんといっても「かけ算」です。
ここで大切なのは、「かけ算は同じ数のまとまりがいくつあるかを考える計算」であるということです。
例:4+4+4+4+4+4 → 4のまとまりが6こ → 4×6
つまり、「4を1つのまとまりと見て、それが6こある」という視点が不可欠です。
「何を1と見ているか」を意識させることで、かけ算の意味理解が格段に深まります。
■3年生:大きな数・小さな数も「まとまり」で理解する
3年生では、「大きな数」と「小数」を学びます。ここでも『まとまり』が活躍します。
例:「300+200」は、「100のまとまりが3こ+2こ」で、「500」
さらに「0.3+0.2」は、「0.1のまとまりが3こ+2こ」で、「0.5」
つまり、数が大きくなっても小さくなっても、「共通の単位(まとまり)でいくつあるかを考える」という考え方は変わりません。
また、かけ算九九の理解もこの時期に完成しますが、それも「まとまり」を使って考えることで、機械的な暗記ではなく、意味のある理解につながります。
■4年生:単位の統一と分数の登場
4年生になると、数の世界が一気に複雑になります。小数の計算に加え、分数も本格的に登場します。
例えば、
「0.3+0.02」を考えるとき、0.3は0.1のまとまり、0.02は0.01のまとまりであり、異なる単位ではたし算ができないことに気づかせる必要があります。
ここで必要なのが、「何を1(まとまり)として見るかを統一する力」です。
また、分数のたし算も同様です。
例:「3/5 + 2/5」は、「1/5のまとまりが5こ」として、同じ単位のまとまりの数を足すという理解が不可欠です。
■5年生:『割合』=「1と見たとき」の極み
多くの児童にとって難関となる「割合」。この単元こそ、まとまりの考えの集大成です。
例:「200円は50円の何倍ですか?」→「50円を1と見たときに、200円は何個分か?」
割合の考えは、まさに「ある数を1(基準)と見て、他の数がいくつ分か」を問うものです。これは、これまでの学年で積み重ねてきた「まとまり」の力がなければ到底太刀打ちできません。
■6年生:比・速さ・拡大図…すべては「1と見たとき」に始まる
6年生になると、抽象度がさらに上がりますが、根本にあるのはやはり「まとまり」です。
● 比
「赤:青=3:2」 → 青を2と見たとき赤は3
→ どちらかを1と見たときに、他はどれくらいかを考える力
● 速さ
「60mを3秒で走る」→「1秒で20m進む」
→ 時間を1と見て、距離がどれくらいかを考える
● 拡大図・縮図
もとの図形を「1としたとき」、拡大図は「何倍か」
→ 図形にも「まとまり」の発想を応用
● 分数のかけ算・わり算
「1/2 × 3」→「1/2を1つのまとまりとして、それが3こ」
「3 ÷ 1/2」→「1/2のまとまりが3の中にいくつあるか」
すべての単元で、「数や量を1と見て、その関係を考える」という力が求められています。
■おわりに:『まとまり』を意識すれば、算数はもっとわかる
「まとまり」という視点は、単なる計算のテクニックではなく、論理的思考力を育てる柱です。
小学校の算数は「数を1と見る」という、極めて本質的な考え方の上に成り立っています。それができるようになると、算数は単なる作業ではなく、意味のある学問として見えてきます。
6年生で『まとまり』の考えが完成すると、中学校数学への橋渡しがスムーズになります。子どもたちが算数を「わかる」「おもしろい」と思えるよう、『まとまり』をキーワードに授業や家庭学習を見直してみてはいかがでしょうか。
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